アダルトチルドレンの症状がつらかった頃の私
私が20代だった頃、人と話すのがとにかく怖くて仕方ありませんでした。雑談をするにも頭が真っ白になって、うまく返事ができない。話しかけられたら無理に笑顔を作るけれど、心の中はパニック状態でした。特に、年上の人や初対面の人が相手だと、身体が固まってしまい声がうまく出ないんです。

当時は、自分のこうした状態を「性格だから仕方ない」と思っていました。でも、実はこれらはアダルトチルドレンの症状のひとつだったのです。
自分を責めるクセが抜けなかった
人とうまく話せなかった日は、家に帰ってから何度も自分を責めていました。「あんなふうに言ったら嫌われたよな…」「私ってやっぱりダメな人間だな」そんなふうに、1日の出来事を何度も何度も反芻しては落ち込んでいました。
ちょっと笑われた気がしただけで、「見下された」と思ってしまう。誰かの言葉が引っかかって、夜眠れなくなる。そんな日々が何年も続きました。
アダルトチルドレンの思考のクセ
こうした「過剰な自己批判」や「ネガティブな思い込み」は、アダルトチルドレンに多く見られる認知の歪みです。
完璧主義と思い込み
アダルトチルドレンの方には、「人から嫌われてはいけない」「失敗してはいけない」という完璧主義的な考え方が根強くあります。この考え方は一見、努力家に見えますが、実はとても自分を追い詰める思考パターンでもあります。
たとえば、上司に注意されたとき「私はもうダメだ」と思い込んだり、友達の返信が少し遅れただけで「嫌われたかも」と不安になったり。こうした極端な思考は、アダルトチルドレンに特有のものです。
否定的なセルフトーク
アダルトチルドレンは、無意識に「自分は価値がない」「誰にも受け入れてもらえない」といった否定的なセルフトークを繰り返しています。こうした考えがさらに不安や恐怖を強め、人との関係をより難しくしてしまいます。
認知行動療法との出会い
そんな私が希望を見出せたのが、認知行動療法との出会いでした。最初は「心理療法なんて本当に効くの?」と疑っていましたが、通い始めて数ヶ月、少しずつ変化を実感するようになりました。
考え方のクセに気づくことが第一歩
認知行動療法では、まず「自分がどんな考え方のクセを持っているか」に気づくことから始まります。
たとえば、
- "あの人があくびをした=私の話がつまらないからだ"
- "今、沈黙ができた=私は嫌われた"
といった、自動的に浮かぶ思考(自動思考)を書き出していきます。
思考の検証と修正
次に、その思考が本当に正しいのか?根拠はあるのか?他の解釈は可能か?と、客観的に見つめ直す作業をします。
たとえば「あの人はただ眠かっただけかもしれない」「沈黙ができたのは、相手が考え事をしていたのかもしれない」など、別の見方をしてみるのです。
これを繰り返すことで、思考の幅が広がり、少しずつ「自分=嫌われる存在」という前提がゆるんでいきます。
認知行動療法でできること
認知行動療法では、思考だけでなく「行動」にも働きかけます。
小さなチャレンジで成功体験を積む
たとえば、
- 店員さんに笑顔で「ありがとう」と言ってみる
- 雑談のときに1つ質問を返してみる
など、小さなステップを積み重ねて「やってみた→うまくいった」という成功体験を増やしていきます。
これはちょっとゲーム感覚に近いところもあります。失敗してもOK、とにかく「試してみる」ことに重点を置くので、完璧主義の人にも合いやすい方法です。
感情の記録をつける
自分がどんなときに不安を感じるのか、そのときどんな考えが浮かんだのかを記録する「感情日記」も、認知行動療法では有効です。
感情の波を見える化することで、「自分はこういうパターンで落ち込みやすいんだな」と気づけるようになり、対処しやすくなります。
認知行動療法を続けた結果、私に起きた変化
私は約1年間、専門家のサポートを受けながら認知行動療法を続けました。その結果、人との会話中に感じていた恐怖心が少しずつ減っていくのを感じました。
自分の気持ちや意見も少しずつ言えるようになってきました。
もちろん、今でもときどき不安になることはあります。
でも、そんなときも「また自動思考が出てきてるな」と気づけるようになり、自分を責めすぎずにいられるようになりました。
最後に
アダルトチルドレンの症状に悩んでいる方は、自分の思考パターンや感じ方が「ちょっと偏っているかも」と思ったことがあるかもしれません。でも、それはあなたが悪いのではなく、これまでの経験や環境が影響しているだけです。
認知行動療法は、そんな「考え方のクセ」や「感情の波」を優しく整えていく手助けになります。心が少しでもラクになる道が、ここから始まるかもしれません。
あなたが今よりも少し楽に生きられるよう、この記事がヒントになればうれしいです。