「漠然とした不安」や「常に感じる寂しさ」。それはもしかしたら、子供の頃の見捨てられ不安が、大人になった今もあなたを苦しめているのかもしれません。不安な気持ちは、本来、危険が迫っていることを知らせる大切なセンサーのようなものですが、この見捨てられ不安がコントロールできないと、私たちは常に落ち着かない状態で過ごすことになってしまいます。
この記事では、子供時代の経験に根ざしたこの見捨てられ不安を抱え、大人になってからも苦しんでいるあなたのために、不安と上手に付き合う方法をご紹介します。もちろん、不安な気持ちは感情なので、ゼロにすることはできません。ですが、この深い見捨てられ不安と上手に付き合うことは可能です。

本当はもっと仲良くなりたいのに、見捨てられるかもしれない不安が邪魔して辛いです
この記事を読めば、無理に不安を払拭しようとしなくても、自然体で見捨てられ不安と向き合い、穏やかな日々を送るヒントが見つかるはずです。ぜひ最後まで読んでみてください。
子供の頃の見捨てられ不安が大人になっても続くメカニズム
なぜ子供の頃の見捨てられ不安が、大人になった私たちをこれほどまでに苦しめるのでしょうか。その根源には、幼少期の特定の経験と、それによって形成された心理的なメカニズムが隠されています。特にアダルトチルドレン(AC)と呼ばれる人々には、この見捨てられ不安が強く表れる傾向があります。
愛着形成における初期の課題
人間の赤ちゃんは、養育者との安定した関係を通じて、安全な基地(セキュアベース)を築き、世界への信頼を育みます。これを心理学では「愛着形成」と呼びます。しかし、子供の頃に以下のような状況を経験すると、健全な愛着形成が阻害され、「見捨てられ不安」が根付いてしまうことがあります。
- 養育者の不安定さ: 親の感情が不安定で予測不能だったり、気まぐれに優しくなったり厳しくなったりする場合。
- 拒絶的な態度: 親が子どもの要求や感情に適切に応えず、拒絶的な態度を取る場合。
- 過剰な支配: 親が子どもの自主性を尊重せず、過剰に支配しようとする場合。
- 物理的・精神的な不在: 親が忙しすぎて子どもに関わる時間が少なかったり、感情的に子どものそばにいなかったりする場合。
こうした環境で育った子供は、「いつ親に見捨てられるか分からない」「自分の存在は不安定だ」という根深い見捨てられ不安を抱くようになります。そして、この不安は大人になっても潜在意識の中に残り続け、人間関係や日常生活の様々な場面で顔を出すようになるのです。
アダルトチルドレンに多い「見捨てられ不安」のサイン
アダルトチルドレンは、子供の頃の見捨てられ不安を大人になっても引きずっているため、以下のような行動や感情のパターンを示すことがよくあります。
- 過剰な依存: 誰かに見捨てられることを恐れ、特定の人に過度に依存してしまう。
- 人間関係における試し行為: 「本当に自分を大切にしてくれるのか?」を無意識のうちに試すような行動をとってしまう。
- 境界線の曖昧さ: 他者との間に健全な境界線を引くのが苦手で、相手に深入りしすぎたり、逆に突き放しすぎたりする。
- 些細なことで裏切られたと感じる: 相手のちょっとした言動で「見捨てられた」と感じ、深く傷つく。
- 孤独感の強さ: たとえ人と一緒にいても、心の奥底で常に孤独を感じている。
- 愛情の確認行為: 相手の愛情を頻繁に確認しないと安心できない。
- 完璧主義・過剰な努力: 見捨てられないために、常に完璧であろうと努力し、疲弊してしまう。
これらのサインは、子供の頃の見捨てられ不安が、大人になった今もあなたを支配している証拠かもしれません。常に「自分は受け入れられているのか?」と確認し続けることで、心は休まる暇がなく、疲労困憊してしまうのです。
不安を払拭しようとすればするほど、よけいに不安になる理由
不安な気持ちを無理に払拭しようとすればするほど、アダルトチルドレンが抱える見捨てられ不安はかえって強くなってしまいます。なぜなら、不安を払拭しようとしている状態は、文字通り「不安の対象ばかりを考えている状態」だからです。
例えば、昼からの会議が準備不足で不安だとします。不安な状態で会議に出席すると準備不足が周りにバレてしまうので、不安な気持ちを払拭して平常心でいようとしても、準備不足という事実や、それによって生じるかもしれないネガティブな結果が頭から離れることはありません。むしろ、不安を排除しようとすることで、脳はその不安に意識を集中させてしまい、結果的に不安な気持ちはどんどん強くなり、悪循環に陥ってしまうのです。
これは、心の中に見捨てられ不安があることを認めず、無理に「ないこと」にしようとする行為に似ています。そうすることで、不安はかえって肥大化し、大人になった私たちの心をさらに深く蝕んでしまうのです。
不安と上手に付き合い、見捨てられ不安を和らげるための心理学
子供の頃の見捨てられ不安が大人になっても続くのは、私たちにとって非常に辛いことです。しかし、この根深い不安をゼロにすることは不可能だと知ることが、上手に付き合うための第一歩です。不安な気持ちは人間が進化の過程で身につけた本能的なセンサーであり、未来の危険から身を守ってくれるために備わっているものだからです。
どれだけ表面上は強そうで、不安とは無縁なように見える人でも、不安になる気持ちは持っています。不安になるのが人間なのですから、不安を払拭することは不可能だと割り切りましょう。 もし人間に不安になる気持ちが備わっていなければ、とっくの昔に人間は絶滅してしまっています。だって、危険なことを躊躇なく何でもやってしまうでしょう? だから、不安な気持ちは自分を守る大切なアラートだと理解し、正当な感情として受け入れることが重要なのです。
では、アダルトチルドレンが見捨てられ不安とどのように上手に付き合っていけばいいのか、具体的な方法をご紹介します。
不安を「あるがまま」受け入れる
見捨てられ不安を払拭しようとするのではなく、「自分が不安な気持ちを感じている」という状態をあるがまま認めて受け入れてしまいましょう。 なぜなら、不安な気持ちを無理に払拭しようとするのではなく、あるがまま受け入れて「感じきる」と、それは自然と薄れていくものだからです。
例えば、仕事で大きなプレゼンテーションを任されて不安で夜も眠れない状態だとします。これまでやったことのない仕事であれば、不安な気持ちになるのはごく自然なことです。アダルトチルドレンは特に、失敗することで「見捨てられる」という恐怖を抱きがちですが、こうした不安を感じたときに無理に不安な気持ちを払拭して押し込めようとするのではなく、「ああ、今、私は不安なんだな」と、不安になっている自分をあるがまま認めて受け入れるのが第一歩です。不安を感じている自分を否定してはいけません。
自分ができるベストな方法は、不安を無理に払拭しようとせず、自分の不安をあるがまま受け入れて、その上でベストなプレゼンテーションをするだけです。ですので、不安な感情は無理に払拭しようとせず、正当な感情としてあるがまま****不安な自分を受け入れてしまうのが、見捨てられ不安と上手に付き合う方法と言えます。
思考の癖に気づき、客観視する
子供の頃の見捨てられ不安を抱えるアダルトチルドレンは、特定の思考の癖に陥りやすい傾向があります。これに気づき、客観視することが、不安を和らげる上で非常に重要です。
- 結論の飛躍への対処: まだ何も起きていないのに「絶対見捨てられる」「どうせ失敗する」と決めつけてしまう結論の飛躍という思考の癖があることに気づきましょう。「本当にそうかな?」「他に考えられる可能性はないかな?」と自分に問いかけてみてください。過去の経験が現在の判断を歪めていないか、意識的に立ち止まって考えてみることが大切です。
- 全か無か思考への対処: 少しの失敗で「自分はダメだ」と全否定してしまう全か無か思考は、見捨てられ不安を増幅させます。「完璧でなくても価値はある」「失敗は学びの機会だ」と、グレーゾーンを許容する思考を意識的に取り入れましょう。小さな成功を積み重ねることで、少しずつ自己肯定感を高めていくことができます。
- 自己関連づけへの対処: 他者の機嫌が悪いと「自分のせいだ」と思い込んでしまう自己関連づけは、アダルトチルドレン特有の苦しさです。「相手の感情は相手のもの」「自分には関係ない可能性もある」という視点を持つように意識しましょう。自分がコントロールできないことに過剰な責任を感じるのをやめることで、不必要な疲弊を減らすことができます。
これらの思考の癖に気づき、「これは私の見捨てられ不安から来る思考だな」と認識するだけでも、その思考に飲み込まれる度合いは大きく変わります。
ポジティブな自己対話を増やす
アダルトチルドレンは、無意識のうちに自分を否定する言葉を心の中で繰り返していることが多いです。見捨てられ不安が根底にあると、「どうせ自分はダメだ」「誰も自分を愛してくれない」といったネガティブな自己対話が優位になりがちです。
これを意識的にポジティブなものに変えていく練習をしましょう。
- 「自分はこれで大丈夫」
- 「できることをやったのだから、それでいい」
- 「たとえ失敗しても、私には価値がある」
- 「私は一人じゃない」
このような肯定的な言葉を、毎日自分自身に語りかける習慣をつけてみてください。最初は違和感があるかもしれませんが、継続することで少しずつ自己肯定感が育まれ、見捨てられ不安が緩和されていくのを実感できるはずです。これは、大人になってからでも十分に変えられる、心の筋トレのようなものです。
日常生活でできる具体的なセルフケア
子供の頃の見捨てられ不安と向き合い、大人としての生活を豊かにするためには、日々のセルフケアも欠かせません。
感情を表現する安全な場所を見つける
子供の頃の見捨てられ不安を持つアダルトチルドレンは、自分の感情を抑圧してきた経験が多いため、大人になっても感情表現が苦手な場合があります。しかし、感情を抑え込むことは、さらなる不安や疲弊を生み出します。
- 信頼できる友人や家族: 安心して話せる相手に、自分の見捨てられ不安や不安な気持ちを打ち明けてみましょう。
- 日記やジャーナリング: 誰かに話すのが難しい場合は、自分の感情を日記やノートに書き出すだけでも、気持ちの整理に役立ちます。
- カウンセリング: 心理カウンセラーは、安全な空間であなたの感情を受け止め、見捨てられ不安の根源を一緒に探り、対処法を学ぶ手助けをしてくれます。専門家のサポートは、アダルトチルドレンの回復にとって非常に有効です。
感情を表現する「はけ口」を持つことは、心の健康を保つ上で不可欠です。
環境を変えることを恐れない
もし、現在の職場や人間関係が、あなたの見捨てられ不安を過度に刺激し、疲弊させていると感じるなら、環境を変えることを恐れないでください。特にアダルトチルドレンは、子供時代の経験から、特定の状況や人間関係で過剰な不安を感じやすいものです。
- 職場環境の見直し: ハラスメントが横行している、過度な競争がある、不当な評価がなされるなど、あなたの心に負担をかける職場であれば、転職を検討することも、自分を守るための大切な選択です。
- 人間関係の見直し: 常にあなたを否定したり、不安にさせたりするような人間関係からは、距離を置く勇気も必要です。
環境を変えることは、見捨てられ不安という、子供の頃から続く根深い問題に、大人として主体的に向き合うための大きな一歩になります。もちろん簡単なことではありませんが、自分らしく生きるための道を拓くためにも、時には思い切った決断が必要なこともあります。
最後に
子供の頃の見捨てられ不安が大人になっても続いていると感じることは、本当に辛いことだと思います。しかし、それは決してあなたのせいではありません。アダルトチルドレンとしてあなたが抱えるこの不安は、過去の経験から身についた、ある種の防衛メカニズムであり、あなたの生き抜いてきた証でもあります。
無理に不安を払拭しようとせず、あるがままの自分を受け入れること、そして自分の心の声に耳を傾ける練習をすることから始めてみましょう。思考の癖に気づき、質の良い睡眠をとる、そして必要であれば環境を変えることも、あなたの心と身体を守る大切な選択です。
すぐに全てが変わるわけではありませんが、一歩ずつ、確実にあなたの心は解放されていきます。自分を大切にし、少しずつでも「自分らしく」いられる時間を増やしていくことが、見捨てられ不安による疲弊から抜け出し、穏やかで充実した日々を送るための道となるでしょう。