自分の価値観ではなく、他人の価値観で生きている気がする。他人の価値観で生きるのをやめたいけどどうしたらいいの?
この切実な問いは、多くの人が抱える心の叫びかもしれません。アダルトチルドレンと呼ばれる人々は、特にこの「他人の価値観で生きる」という状況に陥りやすく、その結果、どこか他人の人生を生きているような感覚に陥ってしまうものです。
他人の価値観は、まるで空気のように、いつの間にか私たちの心に刷り込まれていきます。この記事では、いつの間にか刷り込まれてしまった他人の価値観に苦しんでいるあなたが、少しでも自分の本当の価値観に気づけるように、そして他人の価値観で生きることの苦しみが少しでもましになるように書きました。ぜひ最後まで読んでみてください。
他人の価値観で生きる:その「当たり前」は誰のもの?
世の中には、まるで常識のように語られる他人の価値観が大量に蔓延しています。
- 良い学校に入らなければならない
- 良い会社に入らなければならない
- 高収入でなければならない
- 嫌いな上司にでも言うことを聞かなければならない
- 学校では良い成績をとらなければならない
- 他人から良く思われなければならない
などなど、数え上げればキリがありませんよね。そして、知らず知らずのうちに私たちは、世の中では「当たり前」とされるこれらの他人の価値観を、まるでスポンジのように吸収してしまっています。まるで、それが自分のアダルトチルドレンとしての「宿命」とでも言わんばかりに。
厄介なのは、刷り込まれてしまった他人の価値観が、あたかも自分の価値観であるかのように錯覚してしまうことです。「いやいや、自分は自分で考えて自分の価値観で生きている!」と自信を持っている人もいるでしょう。それは素晴らしいことです。本当に自分が心の底からやりたいことを見つけ、自分の価値観でやりたいことをやっている人は、他人の価値観とは無縁の状態で生きているので、まさに幸せの境地といえるでしょう。
しかし、もしあなたが「なんだか生きづらいな」「もやもやするな」と感じているなら、もしかしたらそれは、アダルトチルドレンの特徴である「他人の価値観で生きる」という状態に陥っているサインかもしれません。
他人の価値観で生きるからこそ生まれる苦しみ:アダルトチルドレンの心の叫び
他人の価値観で生きるということは、自分の本心ではやりたくもないことを、他人の価値観に従ってやることになります。そりゃ苦しくなるのは当然ですよね。考えてみてください。
たとえば、
- 勉強しなければならない
- 収入を増やさなければならない
- 同期に勝たなければならない
- 英語ができなければならない
など、頭の中がやりたくもない他人の価値観でいっぱいになっていたら、息苦しさを感じるのも当然のことです。まるで、自分の人生が誰かのレールの上を走っているかのような感覚に陥ってしまいます。
いったい自分は本当に何をやりたいのか? 自分の価値観で考えた自分の本当のゴールはどこにあるのでしょうか?
自分が本当にやりたいことをやっている間は、多少辛いことがあったとしても、息苦しさなど感じないはずです。むしろ、「これが私の道!」って感じで、多少の困難も乗り越えられちゃったりします。自分がなりたい姿や辿り着きたいゴールに向かって自分の価値観で判断していると、たとえ他人から見て「うわ、大変そう!」というような出来事に遭遇していたとしても、本人は自分の価値観で考えてやりたいと思っていることをやっているから、苦しいとは思わないものです。
アダルトチルドレンが他人の価値観で生きるということは、すなわち、他人から植え付けられた価値観で生きる人間になるということです。それは、自分が本来なりたい姿とはギャップが生じているはずなので、自分の頭の中では常に違和感を感じながら他人の価値観に従っていることになっているはずです。
自分の価値観ではなく、他人の価値観で生きていないかは、思考パターンで判断できます。キーワードは「Must」「Should」です。
- Must:~しなければならない
- Should:~すべきだ
たとえば、「英語を勉強しなければならない」「出世しなければならない」などと考えているならば、それは「Must」や「Should」で考えている状態です。つまり、他人の価値観で生きていることになります。アダルトチルドレンによく見られるパターンですね。
もしも自分の価値観で生きているならば、
- Want to:~したい
と考えているはずです。「英語を勉強したい」「出世してもっと価値提供できるようになりたい」など、自分は心からそうしたいと考えているはずです。
つまり、自分が心から望んでやりたいと思っている「Want to」の状態にあるのではなく、他人の価値観が刷り込まれた「Must」や「Should」で判断している状態こそが、他人の価値観で生きている状態なのです。やりたいことではなく、「やらなければならない」ことで自分の周りが埋め尽くされているので、息苦しくなってしまうのは当然のことといえます。
もしもあなたが、どこか生きづらさを感じているとするならば、自分の価値観ではなく、いつの間にか刷り込まれてしまった他人の価値観で生きていないかを冷静に考えてみることが大切です。
アダルトチルドレンの生きづらさ:幼少期の経験と心理的影響
なぜアダルトチルドレンは、これほどまでに他人の価値観で生きることに陥りやすいのでしょうか? その背景には、幼少期の経験が大きく影響していると考えられています。
アダルトチルドレンとは、機能不全家族(アルコール依存症の親がいる家庭、過干渉やネグレクトのある家庭など)で育ったことで、心の傷を抱え、大人になってもその影響に苦しむ人々のことを指します。彼らは幼い頃から、親の顔色を伺ったり、親の期待に応えようとしたりすることで、自分の本当の気持ちや欲求を抑圧する癖がついてしまっていることが多いのです。
たとえば、感情を表現することを許されなかったり、自分の意見を言っても無視されたりすると、子どもは「自分の気持ちは大切にされない」と感じ、「他人の期待に応えることが安全なのだ」と学習してしまいます。このような環境で育つと、自己肯定感が低くなりがちで、「自分には価値がない」と思い込みやすくなります。その結果、他者からの承認を強く求め、他人の価値観をまるで自分の羅針盤のようにして生きるようになってしまうのです。
アダルトチルドレンは、対人関係においても、自分の意見を主張するのが苦手だったり、相手の気持ちを優先しすぎてしまったりする傾向があります。これは、過去に自分の意見を言うことで傷ついたり、拒絶された経験が影響していると考えられます。無意識のうちに「周りの期待に応えなければならない」「嫌われたら大変だ」といった思い込みにとらわれ、他人の価値観を基準に行動してしまうのです。
この「他人の価値観で生きる」という行動は、一見すると円滑な人間関係を築いているように見えるかもしれません。しかし、心の奥底では常に「自分らしさ」との乖離を感じ、それがアダルトチルドレンの生きづらさの根源となっているのです。自分の本当の感情を抑え込み続けることは、やがて心身の不調として現れることもあります。慢性的なストレス、不安、うつ症状、あるいは身体的な不調に繋がる可能性も少なくありません。
他人の価値観から脱却し、自分軸で生きるためのステップ
さて、アダルトチルドレンが他人の価値観で生きることから抜け出し、自分軸で生きるためにはどうすれば良いのでしょうか。いくつか具体的なステップを紹介します。
1. 自分の感情に気づく:違和感を大切にする
まず大切なのは、自分の心に起こる「違和感」に意識を向けることです。「なんだかモヤモヤするな」「気が進まないな」といった感情は、あなたの心が他人の価値観に「NO」を突きつけているサインかもしれません。この違和感を無視せず、「なぜそう感じるのだろう?」と自問自答してみましょう。
たとえば、仕事で「これをやらなきゃいけない」と感じたときに、本当にそれが「やりたいこと」なのか、それとも「やらされている」のかを冷静に判断する練習をしてみてください。この「違和感」を大切にすることが、自分らしい価値観を見つける第一歩になります。
2. 「Must」「Should」を「Want to」に変える練習
思考の癖を変えることも重要です。「~しなければならない」「~すべきだ」と考えていることに気づいたら、それを「~したい」に変えられないか考えてみましょう。
例:
- 「英語を勉強しなければならない」 「英語を勉強したいのはなぜだろう?(海外旅行で自由に会話したい、字幕なしで映画を見たいなど)」
- 「出世しなければならない」 「出世して何をしたいのだろう?(責任ある仕事で社会に貢献したい、新しいプロジェクトを立ち上げたいなど)」
この思考の転換は、すぐにできることではありません。でも、意識的に練習することで、徐々に自分の本当の欲求が見えてくるはずです。
3. 自分の「好き」や「嫌い」を再発見する
アダルトチルドレンは、自分の「好き」や「嫌い」が曖昧になっていることがあります。これは、幼い頃から自分の感情を抑え込んできた結果かもしれません。
意識的に、自分がどんな時に喜びを感じるか、どんな時に不快に感じるかを観察してみてください。些細なことでも構いません。例えば、どんな音楽が好きか、どんな食べ物が苦手か、どんな場所に行くと心が落ち着くか、どんな人との交流が楽しいか、といったことです。これらの「好き」や「嫌い」は、あなたの個性であり、他人の価値観ではない、あなた自身の「価値観の源泉」です。
4. 小さな「Want to」から行動を起こす
大きな目標を立てる前に、まずは日常生活の中で、小さな「Want to」を実践してみましょう。
- 今日はこれを食べたい!
- この服を着たい!
- あの映画が見たい!
- 週末は〇〇に行きたい!
些細なことでも、自分の「したい」という気持ちを優先して行動することで、少しずつ「自分で選択する」という感覚を取り戻すことができます。この小さな成功体験の積み重ねが、大きな自信となり、アダルトチルドレンが他人の価値観で生きるというパターンから抜け出す原動力になります。
5. 信頼できる人に話してみる
もしあなたが、他人の価値観で生きることに苦しんでいるなら、信頼できる友人や家族、あるいは専門家(カウンセラーなど)に話してみるのも良いでしょう。自分の悩みを言葉にすることで、客観的に状況を整理できますし、誰かに話を聞いてもらうことで安心感を得られます。
特に、アダルトチルドレンの場合、過去の経験から「自分の弱みを見せてはいけない」と思いがちですが、心を開いて話すことは、回復への大きな一歩となります。専門家は、あなたの心の状態を理解し、適切なアドバイスやサポートを提供してくれるでしょう。
自分の価値観で生きる:アダルトチルドレンが手にする自由
アダルトチルドレンが他人の価値観で生きることをやめ、自分の価値観で生きられるようになると、驚くほど心が軽くなります。それは、まるで重い荷物を下ろしたかのような感覚です。
自分が心から望むゴールを設定することで、たとえ他人の価値観から逸脱して批判されたとしても、以前ほど辛くは感じないでしょう。なぜなら、それが自分自身が選んだ道であり、自分の心の声に従った結果だからです。他人の評価に左右されず、自分の内なる声に従って生きることは、真の自由と自己肯定感をもたらしてくれます。
最後に
もしもあなたが今、どこか生きづらさを感じているとするならば、それはもしかしたら、アダルトチルドレンとして、いつの間にか刷り込まれてしまった他人の価値観で生きている可能性が高いです。自分が本当にやりたいことではなく、「やらなければならない」ことで頭の中が埋め尽くされているならば、違和感を感じるのは当然のことでしょう。
他人の価値観に振り回されずに、しっかりとした自分の価値観を築き上げることは、決して簡単な道ではありません。しかし、それに気づき、向き合い、一歩ずつ行動を起こすことで、あなたは間違いなく、より自分らしく、充実した人生を歩むことができるようになります。
今日から少しずつでいいので、あなたの心の声に耳を傾けてみてください。そして、あなたの「Want to」を大切にして、一歩を踏み出してみましょう。その先に、本当のあなたの人生が待っています。