過去の経験が声を塞ぐ? 言葉にならない生きづらさの正体
「本当はこう言いたかったのに…」「なぜか意見が言えなかった」。もしかしたら、あなたは人前で自分の意見を言うのが苦手だと感じていませんか?
その生きづらさは、もしかしたらアダルトチルドレンと呼ばれる特性からきているのかもしれません。
アダルトチルドレンとは、幼少期の家庭環境が影響し、大人になってもその影響が残っている状態を指します。
今回は、アダルトチルドレンがなぜ自分の意見を言うのが苦手なのか、その心理的な背景と、そこから抜け出すためのヒントをお伝えします。
なぜ、意見を言うのが苦手になるのか?
なぜアダルトチルドレンは、自分の意見を表現することに抵抗を感じるのでしょうか。その根底には、幼少期の経験から培われたいくつかの心理的な要因が隠されています。
幼少期の不適切な学習:意見を言うと「怒られる」「失望される」
アダルトチルドレンの多くは、幼少期に「自分の意見を言うと否定される」「感情を表現すると罰せられる」といった経験をしています。
例えば、親の機嫌が悪くなるからと、自分の要求を飲み込んだ経験はありませんか? あるいは、自分の考えを話すと「わがまま」「生意気だ」と非難されたり、親が不機嫌になったりしたことは?
このような環境で育つと、子どもは無意識のうちに「自分の意見を言うことは危険な行為だ」と学習してしまいます。
その結果、大人になっても、相手の顔色をうかがい、波風を立てないようにと自分の意見を抑え込んでしまうのです。
これは心理学でいうオペラント条件づけに近い形で、特定の行動(意見表明)がネガティブな結果(罰、不快な状況)と結びついて強化され、その行動が抑制されるようになります。
また、親が感情的に不安定だったり、常に批判的だったりする場合、子どもは親の感情の揺れを敏感に察知し、自分の存在が親の不機嫌の原因になるのではないかと恐れるようになります。
そうした経験が積み重なることで、アダルトチルドレンは「自分を表現することは周囲に迷惑をかける」という信念を形成しやすくなります。
この信念は、自己肯定感の低さにも繋がり、「どうせ自分の意見なんて聞いてもらえない」という諦めにも似た感情を抱かせる原因となるのです。
自己肯定感の欠如:「どうせ私なんて」という心の声
自分の意見を言うのが苦手な人の多くは、自己肯定感が低い傾向にあります。
アダルトチルドレンは、幼少期に適切な肯定や承認を得られなかった経験から、「自分には価値がない」「自分の意見は重要ではない」と感じがちです。
例えば、何か意見を言っても「そんなこと言ったって無駄だよ」と一蹴されたり、頑張って何かを成し遂げても褒められなかったり、むしろ批判されたりした経験は、子どもの自己肯定感を大きく損ないます。
こうした経験が積み重なると、大人になっても「どうせ自分の意見を言っても無駄だ」「馬鹿にされるだけだ」という思い込みが根強く残ってしまいます。
この自己肯定感の低さは、アダルトチルドレンが意見を言うことへの強い抵抗を生み出します。
周りの評価を過度に気にし、「完璧な意見を言わなければならない」「間違ったことを言ったらどうしよう」という強迫観念に囚われやすくなります。
しかし、人間は誰しも間違うものですし、完璧な意見など存在しません。この「完璧主義」は、自己肯定感の低さの裏返しであり、意見表明の大きな足かせとなるのです。
承認欲求の強さ:嫌われたくない、受け入れられたい
アダルトチルドレンは、幼少期に得られなかった承認を大人になってから強く求める傾向があります。
そのため、「人に嫌われたくない」「みんなに受け入れられたい」という欲求が人一倍強くなります。この強い承認欲求が、自分の意見を言うことへの大きな障壁となることがあります。
自分の意見を言うことは、多かれ少なかれ相手からの反論や否定を伴う可能性があります。アダルトチルドレンは、そうした「否定される可能性」を極端に恐れます。
なぜなら、否定されることは「自分は受け入れられなかった」という、幼少期の心の傷を再びえぐられるように感じるからです。
この「嫌われたくない」という思いが強すぎると、相手の意見に合わせたり、自分の意見を引っ込めたりして、波風を立てないように振る舞うようになります。
結果として、自分の本音を押し殺し、周囲に流されてしまうことが多くなります。これは、アダルトチルドレンが健全な人間関係を築く上での大きな課題となることがあります。
周りの目を気にしすぎないことからはじめよう
「周りの目を気にせず意見を言うなんて、そんなの無理!」って思いますよね。でも、ちょっと考えてみてください。
周りの目を気にし始めると、どう思われるかをまず気にして、結局自分の意見が言えなくなっちゃうんです。これは、アダルトチルドレンの方によく見られるパターンです。
意見を言わないことって、確かに楽なんですよ。だって、誰にも反対されないし、否定もされない。
波風立たないし、安全地帯にいる気分。でもね、自分の意見を言わずに楽することを続けてしまうと、どんどん意見を言わなくなってしまうんです。
人間って、楽なほうへ流される生き物だから、一度意見を言わないクセがつくと、なかなか抜け出せなくなっちゃうんです。
自分の意見を言うのに、他人からどう思われるのかなんて、本来気にする必要はありません。
間違ったことを言わないようにって変な気を回しすぎると、何も発言できなくなっていきます。
まずは、周りの目を気にせず、間違ったことでもいいので意見を言ってみることが大切です。
全員から賛成されようとは思わないこと
自分の意見を言うときに、全員から賛成されようと思ってはいけません。
なぜなら、全員が賛同するような意見を言おうとすると、何も発言できなくなってしまうからです。これもまた、アダルトチルドレンが陥りやすい考え方です。
例えば、会議中に自分の意見が思い浮かんだとしても、「この人には反対されそうだ」「あれこれ考え始めると何も発言できなくなる」という経験、ありませんか? このような状態は、自分の発言を否定されたくないという考えからきていますが、そもそもその場にいる全員が賛同する意見を言うのは不可能です。
自分の意見を否定されたり、全く別の考えがあるというのはごくごく自然なことです。
心理学では、人間はそれぞれ異なる経験や価値観を持っており、同じ事柄に対しても多様な解釈や意見を持つのが当然だと考えます。
だからこそ、反対意見があることを前提として意見すれば、発言への恐怖は和らぎます。むしろ、異なる意見が出ることで議論が深まり、より良い結論にたどり着く可能性が高まります。
まずは人の意見に質問してみる練習
「いきなり自分の意見を言うのはハードルが高い…」そう感じるなら、まずは人の意見に質問して練習してみるのがおすすめです。
簡単なところから始めることで、自分の意見を言うことへの抵抗を減らすことができます。
おそらく質問するときも、「こんな質問してバカにされたらどうしよう」という考えが頭をよぎるかと思います。
こうした「自分以外の人からバカにされたらどうしよう」という考えは、自分の意見を言えないのと根本的には同じ状態、つまり他者からの評価を過度に恐れるアダルトチルドレン特有の心理が働いています。
例えば、誰かが意見したことに対して、
- 「このあたりがよくわからなかったのでもう少し詳しく教えてもらえますか?」
- 「自分はこのように理解しましたけど合ってますか?」
- 「それについてはこのような考え方はできませんか?」
と質問することで、発言する練習をしてみましょう。
質問は、相手の意見を尊重し、理解しようとする姿勢を示すものです。
批判的にならず、純粋な疑問や確認として質問することで、コミュニケーションのきっかけを作ることができます。まずは簡単な質問から始めてみることで、自分の意見を言うハードルが下がっていきますよ。
自分の意見を言うと「フィードバック」がもらえる
自分の意見を言わないと、他人からのフィードバックが得られず成長が止まってしまいます。
どういうことかというと、自分の意見を第三者が聞くことで、良くも悪くもフィードバックが得られるからです。
こうしたフィードバックの数が多ければ多いほど、自分の意見が洗練されていくようになります。
フィードバックの中には肯定的なものもあれば、もちろん否定的なものも含まれます。
否定的なフィードバックを避けようとすると、どうしても自分の意見を言わないという選択をしてしまいます。これは、アダルトチルドレンが持つ、否定されることへの強い恐怖からくる行動です。
けれども、否定的なフィードバックの中にこそ、自分が成長するためのヒントが隠されていたり、自分が気付かなかった視点が含まれていたりします。
心理学では、フィードバックは自己認識を高め、行動変容を促す重要な要素とされています。ですから、フィードバックの数は多ければ多いほど良いのです。
否定的なフィードバックは必要以上に怖がる必要はありません。
それは、あなたがステップアップしていくために必要な「栄養」のようなものと捉えるのが大切です。
つまり、あなたが否定的なフィードバックを怖がって意見しないということは、自分の成長を放棄することになってしまうんです。もったいないと思いませんか?
自分の意見を言わなくなると自分に自信がなくなる
自分の意見を言わなくなると、どんどん自分に自信がなくなってしまいます。
これは、アダルトチルドレンにとって特に深刻な問題です。自分の意見を言わないということはすなわち、「自分の意見など聞いてもらう価値がない」ということを自らに刷り込んでいるようなものだからです。
ですから、自分の意見を周りの人に聞かれまいとすればするほど、「自分の意見には価値がない」ということを自らに刷り込むことになってしまいます。
例えば、
- 「こんなこと言ったらバカにされるんじゃないかな」
- 「どうせ自分の意見なんて誰も興味ない」
- 「自分の意見は誰も求めてないだろう」
こんなことを考えて自分の意見を言わないとすれば、それは自分自身を否定することになってしまいます。
自分の意見を押し殺すと、自己効力感(「自分にはできる」という感覚)が低下し、ますます自信を失っていきます。
これは悪循環です。自分に自信が持てないと、さらに意見を言えなくなり、また自信を失う…という負のスパイラルに陥ってしまいます。アダルトチルドレンの中には、このスパイラルから抜け出せずに苦しんでいる人が少なくありません。
自分の意見を言うと「反対意見」があるのは当たり前
頑張って自分の意見を言えたとして、反対意見があるのは当たり前です。
自分と全く同じ人間がもう一人いたとしたら、どちらか片方は不要になってしまいます。
自分と全く同じ意見を持ち、自分が言うことすべてに賛同し、価値観すらも全く同じことは、ほぼあり得ません。
心理学においても、人間は個性豊かな存在であり、多様な視点や考え方を持つことが健全であるとされています。
自分と異なる意見が出てきたときには、むしろ自分の成長の機会と喜ぶべきです。自分と異なる意見が出てきたときは、あなたの意見が否定されたのではなく、異なる価値観を持った二つの意見が現れただけなのです。
異なる意見が出てこないということは、どこか表面上の関係を持っている可能性があります。
あなたが本音で話せていないか、あるいは相手が本音を話していないかのどちらかかもしれません。
自分のクローンと話しているわけではないのですから、異なる意見が出てくるのは当たり前のことと言えます。
むしろ、多様な意見が交わされることで、より建設的な議論が生まれ、予期せぬ素晴らしいアイデアが生まれることもあります。
アダルトチルドレンが抱える「衝突回避」の心理を手放し、健全な意見交換を経験することは、自己成長に繋がる大切なステップです。
最後に
自分の意見を言わないことは、一見すると安全で楽な道のように感じられます。
特に、幼い頃に意見を否定されたり、感情を抑圧されて育ったアダルトチルドレンの方にとっては、それが当たり前の生存戦略だったかもしれません。
しかし、自分の意見を押し殺し続けることは、自己肯定感を蝕み、成長の機会を奪い、最終的には自分自身の存在を否定することに繋がりかねません。
周りの目を気にしすぎたり、全員に賛成されようとしたりする考えは、あなたの「言いたい」という気持ちにブレーキをかけてしまいます。
まずは小さな一歩として、質問から始めてみたり、完璧でなくてもいいから自分の意見を口に出してみることから始めてみませんか? 否定的なフィードバックを恐れず、それを成長の糧と捉える視点を持つことも大切です。
自分の意見を言うことは、あなたの存在を肯定することでもあります。
異なる意見は当たり前。むしろ、多様な意見が交わされることで、新しい発見やより良い解決策が生まれる可能性を秘めています。
あなたが自分の意見を堂々と話せるようになることは、あなた自身の自信に繋がり、より豊かな人間関係を築くための第一歩となるでしょう。
あなたの内にある声は、決して無価値ではありません。それを外に出すことで、あなたの世界はもっと広がっていくはずです。