はじめに:いい人でいるのがしんどくなったあなたへ
「いい人と思われたい」「嫌われたくない」──そんな思いから、つい自分の本音を飲み込んでしまう。
気づけば、自分よりも他人の気持ちや期待を優先し、疲れ果ててしまっていませんか?
実はこの「いい人症候群」、アダルトチルドレンに多く見られる傾向です。親との関係のなかで「いい子」であることを求められて育ち、自分の感情や欲求を抑えることが当たり前になってしまった人に起こりやすいのです。

いい人を演じようとして笑顔をふりまきながら心の中ではよく泣いていました
今回は、「いい人をやめたい」「もっと楽に生きたい」と感じている方に向けて、いい人を演じる心理の背景と、やめるための実践的なヒントをお伝えします。
いい人を演じ続ける人が抱える心の疲れ
他人の顔色を気にしすぎて、自分が見えなくなる
「本当は行きたくないのに、断ると悪い気がして飲み会に行ってしまう」
「相手の機嫌が悪いと、自分が何か悪いことをした気になる」
こうした反応は、アダルトチルドレンによく見られる「他者中心の自己像」に基づく行動パターンです。これは、自分の気持ちよりも相手の期待に応えることが優先されてしまう状態です。
その結果、次第に自分の本音がわからなくなっていき、「私は本当は何がしたいんだろう?」という空虚感に襲われます。
断ることへの強い罪悪感
「断ったら嫌われるかも」
「冷たい人だと思われるかも」
そんな思い込みが強く根づいているのも、アダルトチルドレンの特徴です。子ども時代に「自分の感情を出すと否定された」「親の期待に応えないと愛されない」と感じてきた人ほど、他人を優先しやすくなります。
でもね、ちょっと考えてみてください。自分の気持ちを大事にするって、そんなに悪いことですか?
むしろそれが、自分を大切にするってことじゃないでしょうか。
いい人をやめると、なぜ楽になるのか?
嫌われることが怖くなくなると、人間関係が自然になる
「嫌われてもいいや」と思えるようになると、肩の力がスッと抜けます。
不思議なことに、自分らしく振る舞うようになると、かえって周囲との関係もよくなることが多いのです。
心理学ではこれを「自己一致」と呼びます。自分の内面(感情や価値観)と、外に見せる自分が一致している状態です。
自己一致している人は、無理なく他者と関われるため、ストレスが少なくなります。
「いい人」を続けることのリスク
「誰にでもいい顔をしていると、搾取されやすい」とよく言われます。
過度に他者に従順な態度は、いわゆる「利用されやすい性格」として悪意ある人のターゲットになってしまうのです。
また、いい人を続けることで、自分の怒りや悲しみなどの感情を抑え込むクセがつきます。これは「感情抑制」と呼ばれ、うつや不安障害のリスク要因のひとつです。
いい人をやめるためにできること
NOと言う練習をしてみる
いきなりすべてを断るのは難しいかもしれません。
でもまずは、「行きたくない誘いを1つ断ってみる」「嫌なことに対して、少し言い返してみる」など、小さなNOから始めてみましょう。
たとえ断っても、案外相手は気にしていないものです。
自分との「先約」を優先する
「その日はちょっと予定があるんで…」
これ、魔法の言葉です。たとえその予定が「一人でのんびりしたい」だけだとしても、立派な予定です。
他人を優先するクセが強いアダルトチルドレンは、自分との約束を「優先していいもの」として認識し直すことが大切です。
認知行動療法的アプローチを試してみる
「嫌われたらどうしよう」という考えが浮かんだら、紙に書き出してみましょう。
そして、「それって本当に起こること?」「もし嫌われても、自分の価値は変わらないよね」と問い直してみる。
これは認知行動療法の基本的な技法のひとつで、自分の思い込みに気づき、修正していく助けになります。
「いい人=評価される」は幻想かもしれない
「あの人、いい人なんだけどね…」
この言葉、実は「でも何か物足りない」と暗に言われているケースもあります。
社会は「自己主張しない人」に対して、残念ながらそれほど高い評価を与えてくれません。
むしろ自分の意見をはっきり持ち、軸を持って行動している人のほうが評価されやすいのが現実です。
いい人をやめたからといって、人としての価値が下がるわけではありません。むしろ、自分を取り戻すことで、より魅力的な人間になれるのです。
最後に:いい人じゃなくても、あなたは価値ある存在です
アダルトチルドレンの人が「いい人」でいようとするのは、過去の環境が大きく影響しています。
でも、もうその役割を手放してもいい時期かもしれません。
無理して好かれようとするのではなく、自分の気持ちを大切にして生きること。それが本当の意味で「楽に生きる」ことに繋がります。
あなたは、いい人を演じなくても、ちゃんと愛される存在です。
少しずつ、自分を解放してあげてください。